そのた育児情報

 〜歯の健康のおはなし〜

                                  歯科衛生士 はるちゃんママさんのお話



歯も体の一部です。体の健康なしに歯の健康は考えられません。
かわいい我が子においしく、楽しく、たくさん食べて元気に育ってもらいたい。
そして小さくやわらかい歯を守ってあげるために私たちに出来ることを考えて見ましょう!




みなさんはどうして虫歯になってしまうか知っていますか?
歯、虫歯菌、砂糖の三輪の重なった部分が虫歯です。
すなわち、この3つの条件が全て満たされて初めて虫歯に なるのです。
どれかひとつでも 欠くことができれば虫歯にならないということになります

虫歯になりやすい人
『いくらブラッシングをしても虫歯になってしまう…』口の中に虫歯菌がたくさんいて、
しかも、砂糖の摂取量が多い人です。
『生まれつき歯質が弱い人』は極まれです!

★虫歯になりにくい人★
口の中に虫歯菌がいない。もしくは、いても量の少ない人。
又は、菌が多くいても砂糖を摂らない人。
妊娠して赤ちゃんにカルシウムを取られてしまうということはありません。
つわりなどで食事時間が不規則になったり歯磨きできなくなったりするためで、
赤ちゃんのせいではなくお母さん自身の問題なのです。
そして出産後もしばらくは自分の歯にまで気が回らなくなりますよね。
ですから妊娠前から歯のケアをすることが大切です。




虫歯菌が口の中にいると、砂糖という『エサ』を得てネバネバの膜を歯の表面に作ってしまいます。
その中で虫歯菌は生き続け、次第に分厚い膜『バイオフィルム』を作っていきます。
この『バイオフィルム』の中で虫歯菌は砂糖以外の糖分をもエサに酸を出し歯のエナメル質を溶かしはじめます。
これが虫歯のはじまりです。歯磨きの目的は食べカスを取り除くためにすると言うよりも、
この水に溶けないヌルヌルベタベタの『バイオフィルム』を取り除くためにするのです。



1  お母さん(お世話をする人)が自分の歯をきれいにする。
2  規則正しい生活リズムを整える。
3  砂糖の摂取量を減らす。(シュガーコントロール)
4  寝る前に歯磨きをする。


1  お母さん(お世話をする人)が自分の歯をきれいにする。
生まれたての赤ちゃんの口の中は無菌状態です。
虫歯菌はそのほとんどが母親からの感染と言われています 。
同じスプーンを使ったり、指をなめてあげたり、キスをしたり。
大切なコミュニケーションによって感染してしまうのです。 特に虫歯の穴の中にはたくさんの虫歯菌がいますが、
治療して菌の数が減れば感染させるチャンスも激減します。
一度住みついてしまった虫歯菌を口の中からなくすことは難しいですが、
歯磨きやシュガーコントロールをしてまず自分の歯をきれいに保ちましょ

2  規則正しい生活リズムを整える。
歯の健康を考えるとき、虫歯菌だけを目の仇にするのでは意味がなく、
体全体に目を向ける必要があると思います。
規則正しい生活リズムを土台に、決まった時間に食事やおやつを与えダラダラ食べをしないことは、
それだけで虫歯予防につながります。

3  砂糖の摂取量を減らす。
(シュガーコントロール) しつこいようですが砂糖というエサがなければ虫歯にはなりません。
砂糖をゼロにする必要はありませんが、おやつを見直す必要があります。
砂糖をたくさん使った噛みごたえのないお菓子を減らし、
焼きイモ、焼き栗、果物など自然な甘味においしさを感じられるようにしてあげることも大切ではないかと思います。
特にジュースも注意が必要です。イオン飲料、乳酸菌飲料などは多量の砂糖が入っています。

4  寝る前に歯磨きをする。
特に子供の場合、完璧な歯磨きは難しいですよね。
だからこそ、分厚いバイオフィルムを作らせる前にこまめに取り除きましょう。
少なくとも一日一回就寝前にすることが大切です。
ほっぺたをこすることができる程度の弱い力で小刻みに毛先を動かしてあげましょう。
唇や歯肉ヒダをガードするときは指先ではなく、指の腹全体を使うようにして、
やさしく広げるようにするのがコツです。
検診時には歯科衛生士に直接指導を受けてください。



唾液にはたくさんの役割がありますが、口の中の清浄と歯の再石灰化もその大切な作用です。
そして、歯の表面に直接唾液がふれている限り虫歯にはなりません。
ところがバイオフィルムが歯の表面を被ってしまうと唾液をさえぎってしまうのです。
虫歯菌は砂糖が口の中にない状態ではフワフワと浮いているだけで歯にはくっつけず、
唾液によって自然に洗い流されてしまい歯の表面に居座ることはできません。
また、食事をすると歯のカルシウムなどが唾液中に溶け出しますが(脱灰)、
食後しばらくすると再び唾液から歯へと戻されます(再石灰化)。
しかしバイオフィルムが邪魔をするとこの再石灰化がおきません。
また、ダラダラ食べをすると常に脱灰が続き、再石灰化する間がないので虫歯になりやすくなるというわけです。
就寝時は唾液の分泌量がとても少なくなるので寝る前の歯磨きはとても大切なのです。



虫歯菌の感染は1歳7ヶ月〜2歳7ヶ月の一年間に集中しているというデータがあります。
この間の母子感染を防ぐことができれば、子供たちの歯を虫歯からかなり守れるということになります。



歯の運命は生え始めで決まるといっても過言ではありません。
歯が生え始めた時に真っ先にその表面に膜(唾液糖タンパク)ができます。
この膜に虫歯を引き起こさせない、善玉菌(私たちの口の中に住む常在菌)を住まわせてしまえば、
あとから虫歯菌が入ってきても空席がなく排除されてしまうので、なんと砂糖をとっても虫歯になりにくくなるのです。
これはスゴイ!うれしいですよね!
ですからお母さん自身がお口の中を健康にして赤ちゃんに善玉菌をプレゼントしてあげましょう!



おっぱいには乳糖が含まれています。
もともと虫歯菌は乳糖をエサにしてネバネバの膜は作れません。
でも砂糖をエサに一度バイオフィルムが作られてしまうと乳糖や果糖 (果物etc)などからも虫歯を作れるようになってしまうのです。
特に寝乳をしている場合は寝る前の歯磨きでなるべくバイオフィルムをなくしておくことが大切です。



歯科衛生士として仕事をしていた頃の私は、
虫歯予防の為に歯の表面を強化するフッ素塗布や、
歯の溝を埋めて虫歯になりにくくする樹脂(シーラント)に頼ることを積極的に患者さんにすすめていました。
でも親となった今、最初から化学的なものに頼るのではなく、 虫歯のできない生活こそが大切なのではないかと思うようになりました。
ある有名な歯科医の言葉です。『人間の体は12歳くらいまでに、ほぼつくられます。
体をつくる一番大事な時期にある歯、乳歯を大事にしないでどうするのでしょう。
虫歯は育児姿勢の現れです。お子さんに虫歯ができてしまったら、
食生活や育児姿勢にどこか問題がなかったか一度見直して見ましょう』

かくいう私もなかなか理想通りにはいかず、悪戦苦闘中!
『たかが歯、されど歯』みなさんはどう感じますか?


参考文献『もう虫歯にならない!』 花田信弘 著
     『子どもおやつ』 幕内秀夫 著