とうふあれこれ  その
 

  食べてはいけない豆腐があった!
  
  れっきとした料理の席に出されたにもかかわらず、食べてはいけない豆腐が江戸時代にはありました。
当時、宴席には「ぬた料理」がよく出たといいます。
酢味噌で魚や長ねぎなどを和える、あの「ぬた」です。
「ぬた」という名は沼田、つまり沼のようにぬかった田んぼからきているそうです。
なるほど、そう言われてみれば酢味噌のとろりとしたところは泥を思わせますね。
このぬた料理、食べるのはいいが、欠点は泥の中を歩くのに似て、箸が汚れることにあります。
次の料理に手を付けようにも、酢味噌のついた箸では困ります。かといって箸をなめるのはマナー違反。
そこで、膳に添えられた豆腐に箸を刺して酢味噌をぬぐったといいます。
江戸時代の末期には、人のおごりもその絶頂に達し、箸洗いにされた「豆腐」(西洋料理でいえば、さしずめフィンガーボール)豪商達の繊細に発達した味覚享楽の極みを物語っているのでしょうか。
他国のお上りの田舎武士や、勤番のものが、一流の料亭へ行ってそれを箸洗いと知らず、醤油をつけて食べしまい、赤恥をかいたという落語のような話もあったとか。

私からいわせれば、落語どころか豆腐のなんと可愛そうなことか!何か他に方法があったはずと、遠い昔のこととはいえ憤慨してしまいました。


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