『名探偵のままでいて』(小西マサテル/宝島社)【ネタバレ注意】★★
神紅大学認知症の小学校の元校長先生が安楽椅子探偵となり、事件に巻き込まれた小学校教諭の孫娘の楓をサポートするというお話。そこに楓に思いを寄せる同僚の岩田と、その後輩の劇団員の四季が絡
む。
第1章は楓が古本で買った評論集に著者の訃報記事が挟んであった謎解きだが、ビブリアの劣化コピーのようで完全に期待外れ。
第2章の居酒屋の密室殺人事件も色々と無理がありすぎて期待外れ。悪党が店に入ってきたことに誰も気付かなかったとか、○○が揉み合いの末その男を刺したとか、○○が押したらより深く刺さって死んだとか、ご都合主義だらけ。ただ、冒頭の四季の初登場シーンは楓との掛け合いのテンポもよく好印象。この四季と岩田をもうちょっと上手に使えなかったのかなというのが全体を通して気になったことの一つ。
第3章のプールでの人間消失事件も酷い。校長の叙述トリックとか水音の正体とか、とにかくしょうもない。楓が校長のプロフィールを聞き逃したから事件の真相にたどり着けなかったとか、ご都合主義にも程がある。事件を計画した動機が「面白いから」というのは本当に意味不明。
第4章の「33人いる!」も面白くない。全く印象に残らなかった。
第5章の「幻の女」はまあまあだが、「女が名乗りでなかったのは彼女が○○だったから」という推理は可能性の一つではあるが、そのように確定するには無理があるのでは?自分は刺された少年と同じ立場の人間だったからだと思った。
終章が一番読み応えがある。これがなかったら人に勧められる作品ではない。
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